ジャパンライフ「天下り」問題㊤

処分への影響否定も調査文書〝不存在〟の怪開示請求で判明 作成・取得した職員、誰もおらず
 磁器治療器のレンタルオーナー商法で2000億円超の被害を生み、10月末までに元会長ら13人が詐欺罪と出資法違反の容疑で起訴された 「ジャパンライフ」事件。迅速な法の裁きが待たれる一方、同社への取引対策課職員の「天下り」をみすみす許した消費者庁では、 4度に渡った同社処分をめぐって不作為疑惑がくすぶり続けている。しかも、同庁長官は「天下り」が処分の時期や内容に影響を与えていないと 説明したにもかかわらず、その根拠となる調査を庁内の誰も行っていないことが判明した。不可解極まる「天下り」問題の行方は。
「そういった事実ない
 「元職員の再就職が行政処分の時期や内容に影響を与えたのではないかというお話でございますが、 私どもが調べた限りにおいてはそういった事実はございません」「そうしたことによって、その元職員が再就職したから結果的に遅くなったとか、 そういった事実はございません」「再度何かそれについて調査するとか、そういったことについては考えておりません」。
 以上は、9月23日の定例会見における伊藤明子消費者庁長官の説明だ。
 この会見の前週の同 18日、警視庁を中心とする合同捜査本部はジャ社元会長を含む幹部ら14人を詐欺容疑で逮捕。事件化が決定的となったタイミングで、本紙は会見において、 職員の「天下り」がジャ社に対する立入検査や処分の時期、内容に影響を与えた可能性を改めて問うたところ、 長官は「私どもが調べた限り」という前提の下で影響を否定し、再調査する気もない考えを示した。
立入検査を見送り
 「天下り」が一連の処分に影響を与えなかったと本当に言えるのか。まず指摘されるのは、検討されていた立入検査が見送られた経緯と「天下り」の関係だ。
 消費者庁は13年までには、ジャ社のレンタルオーナー商法によって高齢者を中心に甚大な被害が生じる危険性を把握していた。 このため14年春頃までに立入検査の方針を固めていたという。  が、後に「天下り」する課長補佐が、「本件の特異性」「政治的背景による余波を懸念」「この問題は政務三役へ上げる必要」などと記載した内部資料を作成し、 14年7月の取引対策課内の会議へ提出。結局、当時の課長の判断で指導にとどめられ、立入検査は1年後の15年9月まで行われなかった。
 この課長補佐は12年よりジャ社の指導を担当。その前後より「あと2年で定年退職」「最後の仕事」「御社の顧問になるかどうか」などとジャ社に働きかけたり、 ジャ社にトップ面談を求めるなどしていた。内部資料を作成した時点で、秘密裡に「天下り」を目論見、職務にあたっていた疑いが強い。
立入検査を見送り
 さらに立入検査後は、16年12月の1回目の処分(特商法および預託法による)まで約1年3カ月もの期間が空いた。
 この間、同庁は、課長補佐がジャ社顧問に就任していた件を立入検査で把握したことから、内閣府再就職等監視委員会に報告。 16年2月、顧問への就任が再就職規制違反に当たらないとの調査結果をまとめたが、そのすぐ後に監視委員会より「天下り」認定をされるという失態を演じている。
 その後の同年5月、課長補佐はジャ社顧問を退任。一連の対応に手間を費やしたことが処分の時期をずれ込ませた可能性を捨てきれない。
(続きは2020年11月19日号参照)