日弁連 3度目の意見書、連鎖販売規制強化要請
22歳以下との「取引自体を適合性違反に」
日本弁護士連合会は10月21日、特定商取引法の改正によって22歳以下と連鎖販売取引を行うことを禁じることなどを求める意見書をまとめ、
消費者担当大臣と経済産業大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長へ提出した。若者層における関連相談増加や2年後の成年年齢引き下げなどが理由。
日弁連による連鎖販売規制の強化を求める意見書の提出は12年、15年に続き3度目。過去2度の意見書で求めていた、
「ジャパンライフ」事件に代表される利益収受型の取引、借入等を利用した勧誘を連鎖販売で行うことの禁止も求めている。
提出したのは「連鎖販売取引における若年者等の被害防止に関する規制強化を求める意見書」。規制強化を求めたのは①22歳以下との連鎖販売取引の禁止
②利益収受型の物品・役務の取引等に関する連鎖販売取引の禁止③借入金・クレジット等による連鎖販売取引の勧誘の禁止
④適格消費者団体の差止請求権の対象に①~③の違反行為を追加の4項目。①~③に違反する行為を行政処分の対象とすることや、
違反があった契約の申込および承諾の意思表示を取り消すことができる民事ルールの設置も求めている。
学生多い20~21歳「件数の多さ目立つ」
意見書の本文は①について、「少なくとも22歳以下の者との間においては、連鎖販売取引を行うこと自体を適合性原則に違反する具体的な類型として
禁止すべき」と提言。理由に、PIO―NETの「マルチ取引」相談件数が?歳代の若年者で他の年代より多く、
増加傾向にあることや契約金額が高額になる傾向を指摘。東京都消費生活総合センター集計の「マルチ・マルチまがい」相談件数は、
未成年者取消権を使えなくなる「20~21歳」から「件数の多さが目立っている」とする。
また、20~21歳の年齢層は未就業の学生が多く、社会経験が乏しいまま、学校の同級生や先輩、職場の同僚などの親しい人物、
インターネットやSNS等で知り合った人物から勧誘されて契約し、「多額の債務を抱える事例も多く報告されている」と指摘。
若年者が購入・契約に至る心理的要因に〝勧誘者を信用しきっていれば疑いにくく、しっかり考えることができない〟〝説明が納得できると思い込み、
内容を誤って理解してしまう場合もある〟などを上げ、「こうした傾向は、若年者がマルチ取引の被害に陥りやすいことを裏付ける」としている。
省令に若年者追加「範囲が不明確
22年4月に控える18歳への成年年齢引き下げで、18~19歳の若年成人に「マルチ取引のトラブルが拡大することが懸念される」ため
「喫緊の対策が必要」とも強調。近年、「マルチ取引」相談に占める割合が高まっている所謂「モノなしマルチ商法」の問題にからみ、
ネット・SNSの利用も背景に同商法の相談が若年者で目立つ傾向にも触れる。同商法については、「事業者の主体や組織等の実態や取引の仕組みが不明」で、
「被害回復のための事業者との交渉自体にも困難が伴う」としている。
さらに、4月に施行された改正施行規則(省令)で、判断力不足に便乗した契約締結行為が「若年者」を対象とした場合も違法となると明文化されたところ、
「『若年者』というだけでは範囲が不明確」と指摘。新規加入者が新たな加入者を勧誘する連鎖販売の特性から、
「取引の仕組みやリスクについて正確かつ十分な説明を行うことは期待できず、むしろ『必ず儲かる』などの不実告知や断定的判断の提供,
長時間の説得などといった不当な勧誘が行われやすい」ともしている。
(続きは2020年11月12日号参照)