仮想通貨MLM 「ビットマスター」破綻の内幕㊥
一方、経営破たんに至った過程を見ていくと、仮想通貨MLMの開始から3年後に行われた関係業法の改正によって風向きが大きく変わり、 事業を瓦解させた経緯が浮かびあがる。さらに、同事業に乗り出す前に別口のMLMを手掛けていたところ、こちらも関係業法の改正をきっかけに業態を転換。 同社が手がけた2つのMLMのいずれも、法改正によって劣勢を強いられ、立ち行かなくなっていた。
90年代は、フォーバル総合研究所の情報サービス端末MLM「かめもサービス」の代理店として活動。MLMに関わったのはこれが初めてとみられ、 代理店をやめた後、01年から「のぞみ共済」という共済MLMを自社で始めた。
「のぞみ共済」は、割安な葬儀サービスなどを提供。サービスは別組織が運営し、有徳社がバイナリー型プランで会員募集を請け負っていた。
この流れで、有徳社も募集方法をMLMから代理店型に転換。掛け金が月2000円とMLMの単価相場から低く、その代償としてボーナスを抑えていたため、 ビジネス活動が低調になりかけていた事情もあった。
債権者集会報告書によれば、07年から福利厚生サービスMLMの「安心生活ゆいの会」を新たに始めたが、事業譲渡。その後に始めた同系統の 「アルスサービス」事業は会員募集に苦戦し、12年に活動を停止した(この間の10年にユートクへ社名変更)。
関係会社が預り金を流用していたとして、
18年4月に改正資金決済法で業務停止を
命じられた
その一方で、仮想通貨マーケットは、かつての無秩序な〝無認可共済〟業界を彷彿させるかのように、悪質な事業者や手口が跋扈。 14年のBTC取引所「マウントゴックス」破たんなどを受け、保険業法の改正で〝無認可共済〟を一掃した金融庁が、 今度は資金決済法の改正による仮想通貨規制に乗り出し、16年改正で仮想通貨交換業に登録制が導入された。 この交換業登録制を境に、ビット社の目論見が狂い始める。
(続きは2020年10月8日号参照)