消費者庁 取引対策課「法執行に支障およぼす」要請権の行使対象拡大案、雲行き怪しく
過量販売等に広げるアイデアは、
「特定商取引法及び預託法の制度の在り方
に関する検討委員会」の初会合(=写真)
において事務局の資料に記載され、
8月の最終報告書にも盛り込まれた
検討委員会の事務局を務めた消費者庁・取引対策課が、初会合で、現行法で対象となっていない過量販売や適合性原則違反の疑いがあるケースについても、 根拠資料を要請できるようにすることを提案。8月までに計6回が行われた会合では、日本訪問販売協会や協会理事の弁護士の委員から慎重論が出たものの、 最終報告書で「違反行為の立証に時間を要する過量販売等を対象に追加する必要がある」と盛り込まれた。
発案者である取引対策課は、昨年12月の住宅リフォーム訪販「さくらメンテナンス工房」の処分で、過量販売を認定している。 手口は、すでに遮熱材を設置済みの家に別の遮熱材の工事契約を勧誘したというもの。リフォームでは初という過量認定の成果を強調しつつ、 議論のたたき台となる資料で「専門的又は複雑な事項も多く、立証に時間を要する」「法執行を強化・迅速化する」ため、「根拠要請権」の対象拡大を求めていた。
処分までの期間が大幅に短縮されたというデータを
求めた本紙の開示請求に対し、
「着手日」「合理的根拠請求日」「処分日」などを
黒塗りした文書を開示
この中で、04年改正における権限導入後は「法執行の迅速化が可能となって」おり、「直近数年間の行政処分を見ても、当該規定(=根拠要請権、本紙注)の活用により、 当該規定がなかった場合の法執行に比べ大幅に行政処分までの期間が短縮されている」と説明。
これに続けて、「きわめて効果的に当該規定が活用されており、消費者被害の拡大防止という観点から非常に実効的なルールとして機能している」 「違反事業者に対する法執行の一層の強化・迅速化という観点から、これを他の違反類型や取引類型(例えば、過量販売、預託取引における運用実態等) における立証にも同様に規定を整備すべきとの指摘がなされており、所要の制度改正を行うことが検討されるべき」とまとめ、自ら発案した「根拠要請権」の強化を訴えた。
ここで注目されるのが、「当該規定の活用により、当該規定がなかった場合の法執行に比べ大幅に行政処分までの期間が短縮されている」という説明だ。説明の通りであれば、 まだ「根拠要請権」がなかった時の処分と比べて、同権限を活用した場合は処分までの期間が大幅に短縮されているデータを取引対策課は保有していることになる。
そこで、本紙は該当する一切の文書の開示を8月31日付で請求。しかし、9月30日付で開示された文書は、ほほ黒塗り状態のものだった。
消費者庁から開示されたのは、「合理的な根拠を示す資料の提出を求めた事案一覧」と題された4枚のペーパー。黒塗りをされていない部分からは、 「根拠要請権」が導入された04年度から20年度までの17年の間に、国(=消費者庁、経済産業局、内閣府沖縄総合事務局)が処分した事業者の数が読み取れる。
が、これ以外のデータは不開示扱い。処分対象となった事業者のうち何社に合理的根拠の提出を求めたかをはじめ、事業者名、取引類型、取り扱い商品・役務、処分庁の名前は伏せられた。
判明した情報から窺える部分もある。事業者名等の各項目が表示された〝マス目〟の大きさから推測するに、毎年度?社前後の事業者に「根拠要請権」が行使されている模様だ。
開示された過去17年度分において国が処分した事業者の数は、少ない年度で10社、多い年度で34社。過去5年度は16年度12社、17年度17社、18年度19社、 19年度28社、20年度16社で推移しており、幅はあるものの処分事業者の3~8割で「根拠要請権」を使った不実告知が認定されたと見られる。
なぜ、処分期間の大幅な短縮を裏付けるデータを開示しないのか。通知書に記された理由は「執行等に関する着眼点、ノウハウ、手法、時期等が明らかにな(る)」ことで、 「法執行事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」があるというもの。法執行の調査過程で「正確な事実の把握を困難にするおそれ」や、「違法・不当な行為を容易にし、 その発見を困難にするおそれ」もあるとされた。
(続きは2020年10月15日号参照)