「連鎖販売ではない」、不可解な反論の狙いは「48HD」めぐる既払金返還請求訴訟
特商法処分の前提否定、和解案提示も報酬相殺
会員登録してクローバーコインを購入した
消費者に送付していた書面で
「当社のビジネスは特定商取引に関する
法律の連鎖販売取引に該当します」と
説明していた〝
集団訴訟が珍しくないことも特筆される。東京地裁の訴訟の1件は、会員8人が総額約2200万円の支払いを求めて昨年8月に提訴、 同12月に和解した(1月23日号1面詳報)。富山地裁の訴訟は19人が総額3300万円を請求しているという。
3年前の17年10月、48社を処分した消費者庁の取引対策課は、訴訟や返金の状況に関して48社に報告を求めたり報告を受けたかについて、 本紙の取材に「民事の話で権限外。状況がどうこうという話はできない」「指示処分で違反原因の調査、分析等の報告を求めたが、 その報告対象から返金の状況は外れている」とした。
このような状況の中、他の訴訟とは異なる様相を呈しているのが、昨年9月、横浜地裁で提起された集団訴訟になる。
原告の数は33人で、請求総額は約3600万円(訴訟費用含まず)。既払い額のもっとも多い会員は約1000万円の返金を求めている。 参加人数の多さ、金額の大きさが注目されるところ、それ以上に目を見張るのが、連鎖販売事業を行っていたことを否定し、 返金の責任はないとする48社の主張だ。
「2017年9月30日をもちまして、
連鎖販売取引は終了しております」と記載
(9月3日時点)〝
ここで同社は、「単にクローバーコインというデジタルコインを原告らに販売しただけ」「連鎖販売取引を行っていた株式会社でもなく、 特定商取引法上の法的義務を負わない」「被告(=48社)が行っていた事業は、特定商取引法上の連鎖販売取引ではない」などと反論。 原告らがCコインの購入で支払った1口3万円の代金や会員登録料3000円は「連鎖販売取引における特定負担ではない」と主張する。
連鎖販売にあたらなければ、特商法が求める義務も負わずに済む。原告は、クーリング・オフを定めた特商法40条に基づく契約解除を求めたが、 「特定商取引法上の連鎖販売取引に該当しないことから、同法に基づくクーリングオフは認められない」と突っぱねている。
2017年10月の行政処分で消費者庁が
認定した説明(=処分リリース下部)
に沿って連鎖販売事業を行っていたと
主張したが、48ホールディングスは否定〝
メールは、48社の事業が連鎖販売にあたると従業員が「誤解」して送付したもので、返金の額や支払い期限を明示するものではなく、 メールの内容が合意形成の要件を充たしていたとしても「その効力は錯誤無効」と主張する。
連鎖販売を行っていないという48社の反論。この主張を不可解と捉えざるを得ない理由の一つが、前出の東京地裁の集団訴訟では、 同社が連鎖販売を行っていたと認めていることにある。48社による連鎖販売の運営は当然の事実としてそもそも争点になっておらず、なおかつ、 原告全員について特商法40条のク・オフに基づく解約を認める旨さえ返答していた。
東京地裁の訴訟が和解に至ったのは昨年12月。そのわずか1月後の1月、横浜地裁の訴訟では〝連鎖否定〟の主張を突然に始めたことになる。
また、3年前の処分まで、48社は、Cコインを販売する一連の取引が連鎖販売であることを前提に事業を行っていた。その証拠に、 特定利益や特定負担を詳細に説明した概要書面と契約書面を用意し、90日間の返品ルールや20日間のク・オフを記載。 会員登録してCコインを購入した消費者に送っていた文書では「当社のビジネスは特定商取引に関する法律の連鎖販売取引に該当します」と明記していた。
(続きは2020年9月17日号参照)