ダイレクトセリング化粧品 コロナ禍の影響、業績面でも顕著に

緊急事態宣言でサロン営業中止 4~6月の売上落ち込み大きく

 コロナ禍の影響は世界中に広がっているが、日本国内でもその深刻さが明らかになってきた。 内閣府が発表した2020年4月~6月のGDP伸び率(速報値)は年率換算27.8%減で、リーマンショック後(2009年1月~3月期、 年率換算17.8%減)を超えて戦後最大の下げ幅となった。ダイレクトセリング業界の化粧品分野においても、 緊急事態宣言前後にサロン営業の臨時休止を余儀なくされ、消費需要も落ち込んだ結果、多くの企業で落ち込みを見せた。 コロナ禍は、世界的に新規感染者数が再び増加傾向にあり、秋~冬にかけてさらなる状況悪化が懸念されている。各社は、 〝ウィズコロナ〟を前提としたビジネスモデルの構築を急いでいる。

シーボン1Q売上高45%減に
 シーボンの2021年3月期第1四半期(4月~6月)は、連結ベース売上高が前年同期比45.1%減の15億8100万円と、 大幅な落ち込みを余儀なくされた。コロナ禍によるサロン(シーボンフェイシャリストサロン)の臨時休業措置が大きく響いた結果となった。
 損益面は、売上原価率が31.5%で前年同期比9.4ポイント上昇、販管費率が35.2%で同35.2ポイント上昇と大幅に悪化した結果、 営業損失は7億2400万円(前年同期は3400万円の損失計上)、経常損失は7億1300万円(同2400万円の損失計上)、 当期損失は7億2400万円(同3300万円の損失計上)となった。
▲〝非接触型の新メニューでコロナ対策(シーボン)〝
 同四半期では、首都圏などの都市部を中心に、直営店舗の臨時休業やイベントプロモーションなど新規集客活動の全面自粛を実施した。 緊急事態宣言下では、経験豊富なフェイシャリストを臨時配置したり、送料無料キャンペーンの実施など通販部門の強化を図った。 同時に、SNSやアプリといったデジタルツールを活用した動画配信を行い顧客とのコミュニケーション強化を行った。5月中旬以降、 店舗の営業を順次再開し、予約数の制限や非接触型のフェイシャルケアメニューを提供し、 “ウィズコロナ”を見据えたサロン営業のあり方を模索している。緊急事態宣言が解除された6月の継続数は、前年同月比で30%減となったが、 4月、5月に比べて回復基調にある。新規集客については、小規模イベントを中心に再開する一方で、 集客力の高い大型の協賛イベントは再開の目処が立っていない。このことから、新規来店者数は前年同期比83.0%減と大幅な減少となった。
 同社は今期から新中期経営計画を開始する予定だったが、第1四半期はコロナ禍の影響が大きく、 第2四半期以降も不確定要素が多いことから計画の見直しを行っている。連結業績予想については、 コロナ禍の収束が見通せず適正かつ合理的な算定が困難であることから、引き続き未定としている。
ノエビアHD3Q単独売上が21%減
 ノエビアホールディングスの2020年9月期(2019年?月~2020年6月)の連結ベース売上高は、 前年同期比11.0%減の397億2000万円となった。損益面は、営業利益が同26.4%減の69億2500万円、 経常利益が同26.4%減の70億3600万円、当期利益が同27.4%減の35億7700万円となった。4月~6月ベースでは、 売上高が同21.2%減の119億3100万円となり、コロナ禍の影響が顕著に出た。
 事業別の実績は、主力の化粧品事業が売上高が同11.8%減の302億2500万円、セグメント利益が同21.9%減の80億2600万円、 医薬・食品事業の売上高が同8.7%減の82億200万円、セグメント利益が同5.9%減の9億9100万円、 北米での航空事業を含むその他事業は、売上高が同5.5%減の12億9200万円、セグメント損失が1400万円となった。 化粧品事業では、ダイレクトセリングで展開するカウンセリング化粧品をはじめ、 ドラッグストアルートなどで展開するセルフ化粧品ともに低調に推移した。通期業績予想については変更なく、 売上高540億円(前期比8.9%減)、営業利益95億円(同20.8%減)、経常利益97億円(同20.8%減)、 当期利益66億円(同8.7%減)を見込む。
アイビー1Qは売上減も下げ幅小
 アイビー化粧品の2021年3月期第1四半期(4月~6月)は、売上高が前年同期比12.9%減の3億700万円となった。 損益面は、営業損失は4億900万円(前年同期は4億2200万円の損失計上)、 経常損失は4億1900万円(同4億2900万円の損失計上)、当期損失は3億3500万円(同3億2200万円の損失計上)となった。 業績面では2ケタ減になったものの、他社に比べると小さい下げ幅となった同社だが、 第2四半期および第4四半期に実施するキャンペーンで売上・利益を確保する収益スタイルが、コロナ禍の影響をとどめたとみられる。
▲〝コロナ禍で新製品の投入が
遅れたケースも(アイビー化粧品)〝
 4月~6月においては、緊急事態宣言の発令に伴い、他社同様にサロン(アルテミス)や販売による営業活動が大幅に制限されたが、 6月に入り、地域によっては徐々に活動を再開。販売組織とのミーティングや会合にはオンラインツールを併用し、活動をサポートしたが、 主力のレギュラー製品売上は、前年同期比51%減となった。コロナ禍は新製品の発売にも影響し、 複合美容器「アイビービューティパートナー」は3月の有償先行発売が遅れた。一部部材の調達が再開され5月に初回出荷し、 その後も段階的に出荷している。このほか、新製品としては、ヘアケアシリーズ「ヘアプライマリー」を6月に投入し、 シリーズ合計19万4000本超を出荷した。
 同社は今後の見通しについて、テレワークの導入などによって女性の外出機会が減ることで、メーク製品については需要が縮小する一方、 主力のスキンケアについては、生活必需品的な位置づけであることから、影響が限定的とみている。第2四半期の業績予想は期初通り、 売上高21億5000万円(前年同期比3.7%増)、営業利益1億9000万円(同201.4%増)、 当期利益1億4000万円(同303.2%増)を見込む。強化製品の「レッドパワーセラム」および「ホワイトパワーセラム」の 拡販に注力するとともに、恒例のリンクルローションキャンペーンで収益を確保していくとしている。
 このほか、ヤクルト本社の2021年3月期第1四半期(4月~6月)における化粧品事業の売上は、 前年同期比3.8%増の?億700万円とプラスで推移した。全体の連結ベース売上高は、前年同期比3.5%減の925億2800万円、 営業利益が同10.7%増の110億4600万円、経常利益が同29.0%増の177億1000万円、 当期利益が同32.3%増の114億1900万円。コロナ禍を背景に、乳製品の販売数量は増加したものの、清涼飲料の売上が落ち込み、 全体ではマイナスとなった。化粧品事業では、コロナ禍によって一部エステサロンにおけるサービス提供の自粛などの影響を受けたが、 感染防止策を講じた上で営業活動を継続した。6月には基礎化粧品「ラクトデュウ」シリーズのブランド育成策および薬用歯みがき剤 「ヤクルト 薬用アパコートS.E.〈ナノテクノロジー〉」の販促を展開した。