多様なニーズに応える体制構築こそ ダイレクトセリング化粧品
ダイレクトセリング業界の化粧品分野では近年、従来型訪販スタイルから、サロンを拠点とした対面販売へとビジネスモデルのシフトが 積極的に進められてきた。サロンが普遍的なものとなった現在、各社は「次の一手」を求めて新しい商品・サービスを提供するとともに、 サロンビジネスにふさわしい人材の確保・育成に力を入れ、「美容のプロフェッショナル」によるビジネスの質向上にも力を入れてきた。 他方で、2020年初頭から続くコロナ禍は、こうした動きにも逆風となっている。ウィズコロナ時代にふさわしいダイレクトセリングの あり方を模索する取り組みが続いている
40社のうち、エステサロンや地域密着型の店舗といったビジネスモデルを展開している企業は19社となっており、5割近くの企業がサロンビジネスを導入している。 シーボンやCPコスメティクス、ワミレスコスメティックスといった老舗化粧品企業が先駆けとなったサロンビジネスは、ポーラの「ポーラザビューティー(PB)」 や、ナリス化粧品のセルフエステサロン「デ・アイム」の全国展開によって有用性が認知され、業界全体に浸透していったと言える。
社会構造の変化によって、ドア・ツーなど従来型訪販によるアプローチがより困難な時代に、地域に密着した拠点でカウンセリングやエステ、 商品販売を行うサロンビジネスは、訪販で培ってきたノウハウを活かしつつ、事業の透明性を確保できる手法として定着してきた。 しかし、密閉した空間で接客を行うスタイルが、コロナ禍の影響を大きく受けた。緊急事態宣言前後で、サロンを展開しているほぼすべての企業が 店舗の臨時休業・営業時間の短縮を余儀なくされ、売上を落とした。現在は、十分な感染防止対策をとりながら営業を再開しているが、 予約数や施術に必要なベッド数などの制限を設けるケースが多く、コロナ禍前の営業体制に戻ってはいない。
新型コロナウイルスによる影響が長期化する中、非接触型と対面型の施策を活用しながら、営業活動を継続していくことになる。前述の通り、 ポーラはオンラインカウンセリングを導入したほか、今後はECでの売上確保にも注力していくという。7月に創立?周年を迎えたワミレスコスメティックスでは、 ホームページやSNS、動画配信を積極的に活用し、販売員教育や営業活動の支援を行っている。公式ホームページ上で「マスク使用時のスキンケア」や、 テレワークの増加を受けて「リモート映えするメーク」など、いわゆる新しい生活様式のあり方を化粧品企業ならではのアプローチで紹介し、 これまでネットを積極的に活用していなかった販売員からも好評を博している。このほか、エフエムジー&ミッション(旧社名・エイボン・プロダクツ)は、 デジタル施策専門の部署を新たに設け、将来的にはカタログ頒布とデジタルツールの融合も視野に模索していく構えだ。
ダイレクトセリング化粧品分野では、老舗ほど販売員の高齢化という課題を内包しており、デジタル施策導入のハードルという側面があった。 コロナ禍によって社会のあり方そのものが変容しつつある今、対面販売というダイレクトセリングの強みを活かしつつ、さまざまなスタイルで多様なニーズに 対応する重要性がますます高まっていると言える。