多様なニーズに応える体制構築こそ ダイレクトセリング化粧品

コロナ禍の長期化でサロンに変化 対面と非接触型施策の融合

 ダイレクトセリング業界の化粧品分野では近年、従来型訪販スタイルから、サロンを拠点とした対面販売へとビジネスモデルのシフトが 積極的に進められてきた。サロンが普遍的なものとなった現在、各社は「次の一手」を求めて新しい商品・サービスを提供するとともに、 サロンビジネスにふさわしい人材の確保・育成に力を入れ、「美容のプロフェッショナル」によるビジネスの質向上にも力を入れてきた。 他方で、2020年初頭から続くコロナ禍は、こうした動きにも逆風となっている。ウィズコロナ時代にふさわしいダイレクトセリングの あり方を模索する取り組みが続いている

緊急事態宣言で店舗営業に制限
 本紙が2020年7月に実施した「第68回ダイレクトセリング実施企業売上高ランキング調査」をベースに、化粧品を主力商品とするダイレクトセリング (=DS)企業40社の直近実績をまとめたもの。40社のうち、ヤクルト本社は単体ベースの化粧品事業の売上高を「前期売上高」として掲載している。 直近業績の増減率をみると、「増収」が10社、「横ばい」が16社、「減収」が12社となった。これを販売形態別にみると、訪販では「増収」が6社、 「横ばい」が5社、「減収」が6社となっており、MLMでは「増収」が3社、「横ばい」が6社、「減収」が4社、サロン販売では「横ばい」が1社、 「減収」が1社となった。
 40社のうち、エステサロンや地域密着型の店舗といったビジネスモデルを展開している企業は19社となっており、5割近くの企業がサロンビジネスを導入している。 シーボンやCPコスメティクス、ワミレスコスメティックスといった老舗化粧品企業が先駆けとなったサロンビジネスは、ポーラの「ポーラザビューティー(PB)」 や、ナリス化粧品のセルフエステサロン「デ・アイム」の全国展開によって有用性が認知され、業界全体に浸透していったと言える。
 社会構造の変化によって、ドア・ツーなど従来型訪販によるアプローチがより困難な時代に、地域に密着した拠点でカウンセリングやエステ、 商品販売を行うサロンビジネスは、訪販で培ってきたノウハウを活かしつつ、事業の透明性を確保できる手法として定着してきた。 しかし、密閉した空間で接客を行うスタイルが、コロナ禍の影響を大きく受けた。緊急事態宣言前後で、サロンを展開しているほぼすべての企業が 店舗の臨時休業・営業時間の短縮を余儀なくされ、売上を落とした。現在は、十分な感染防止対策をとりながら営業を再開しているが、 予約数や施術に必要なベッド数などの制限を設けるケースが多く、コロナ禍前の営業体制に戻ってはいない。
〝ウィズコロナ〟鍵はデジタル施策の活用
 〝ウィズコロナ〟の営業スタイルとして、ポーラは5月からオンラインによるカウンセリングをスタートさせた。6月には250のショップで導入しており、 7月には500ショップ、さらに9月までに1000のショップでオンラインカウンセリングシステムを導入するとしている。 また、コロナ禍の影響で営業を休止した期間があったことから、契約中のエステコースについては、契約期間を通常12カ月から18カ月に延長する措置をとった。 ナリス化粧品が展開している「ナリス ビューティサロン」では、「短時間(30分)・低価格(税込990円)・実感」をコンセプトとしたクイックエステが特徴で、 短時間の接触という点が、〝ウィズコロナ〟下でもキレイになりたい女性のニーズに合致している。現在、既存顧客では全店舗、新規顧客では一部店舗で 営業を再開している。また、セルフエステサロン「デ・アイム」は、8月1日から営業を再開した。
 新型コロナウイルスによる影響が長期化する中、非接触型と対面型の施策を活用しながら、営業活動を継続していくことになる。前述の通り、 ポーラはオンラインカウンセリングを導入したほか、今後はECでの売上確保にも注力していくという。7月に創立?周年を迎えたワミレスコスメティックスでは、 ホームページやSNS、動画配信を積極的に活用し、販売員教育や営業活動の支援を行っている。公式ホームページ上で「マスク使用時のスキンケア」や、 テレワークの増加を受けて「リモート映えするメーク」など、いわゆる新しい生活様式のあり方を化粧品企業ならではのアプローチで紹介し、 これまでネットを積極的に活用していなかった販売員からも好評を博している。このほか、エフエムジー&ミッション(旧社名・エイボン・プロダクツ)は、 デジタル施策専門の部署を新たに設け、将来的にはカタログ頒布とデジタルツールの融合も視野に模索していく構えだ。
 ダイレクトセリング化粧品分野では、老舗ほど販売員の高齢化という課題を内包しており、デジタル施策導入のハードルという側面があった。 コロナ禍によって社会のあり方そのものが変容しつつある今、対面販売というダイレクトセリングの強みを活かしつつ、さまざまなスタイルで多様なニーズに 対応する重要性がますます高まっていると言える。