〝宣言延長〟下のサロン対応は 顧客から「早く来店したい《要望も

自粛続くも、一部で再開の動き ダイレクトセリング化粧品
 緊急事態宣言が発令されて1カ月余。東京、大阪、神奈川など13の特定警戒都道府県以外では、感染者数の推移が落ち着いていることを踏まえ、 徐々に日常生活や経済活動を回復させる動きが高まってきている(5月12日時点)。しかし、一度落ち着いたように見えても、第2波、第3波が懸念されることから、 引き続き〝3つの密〟を避けるなどの行動変容が求められている。ダイレクトセリング化粧品企業では、サロンをベースにビジネスを展開する企業も多く、 サロンの休業や、施術を中止して物販のみに切り替えるなどの措置が取られている。一方、セミナーや教育をオンラインに切り替えることで、 新しいビジネスのあり方も見え始めているようだ。

続くサロン活動の休止 既存顧客は継続フォロー
 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、ダイレクトセリング化粧品各社は、3月から拠点やサロンにおいて、感染防止対策を実施してきた。 また、従業員のテレワークや時差出勤の実施によって感染拡大防止に努めている。5月7日の緊急事態宣言延長以降も、原則としてこの措置は変わっていない。 ナリス化粧品が展開する「ナリス ビューティサロン《は、都心部の商業施設内でクイックエステを中心に展開している店舗。 同店舗では、宣言発令前は営業時間の短縮や一部営業休止などを行っていたが、発令後は予防策として臨時休業となっている。 休業期間は「当面の間《(5月7日時点)で、再開は状況を見て判断するとしている。「ビューティサロン《は福岡に3店舗、吊古屋および池袋に1店舗などを 展開しており、人の流れが集中しやすいエリアに立地している。また、全国に400店舗以上を展開するセルフエステサロン「デ・アイム《については、 4月中の新規予約受け付けを一時停止していたが、宣言が延長されたことなどを受けて、5月20日まで全国の「デ・アイム《を臨時休業に踏み切った。 5月21日以降は営業再開を予定している。既存顧客の化粧品購入については、NBA(ナリスビューティアドバイザー)が対応に当たっている。
 ワミレスコスメティクスでは、「ワミレスサロン《における感染予防措置などの通知を行っているが、実際の営業判断はサロンをもつ販売会社が行っている。 全国的に外出自粛要請が続く中、一部顧客からは「お手入れに行きたい《という声も挙がっているという。現在は商品の受付・配送のみなどで対応しているが、 今後は感染状況を見つつ、従来以上に衛生管理を徹底し、各地の状況に合わせて営業体制を整えていくことになりそうだ。 会議のオンライン化やWebを使った教育も取り入れている。
 オッペン化粧品では、恒例のばら園一般公開イベント「ローズウィーク《が中止となり、代わりにオンラインで公開することになった。営業活動については、 現場の活動は休止傾向が続いているが、クチコミでの新規紹介・販売など、可能な範囲で対応している模様。会議や教育関連はオンラインで対応しており、 これまで遠方でセミナーなどに参加できなかった販売員もフォローができるようになり、新しい教育体制のあり方を模索している。
直営体制では対応分かれる再開店舗でも予防措置強化
 「フェイシャリストサロン《を全国展開しているシーボンは、緊急事態宣言が全国に拡大されたことを受けて直営店108店舗の営業を休止していたが、 5月11日から一部サロンを除いて営業を再開している(東京、神奈川、千葉、埼玉、北海道などの26店舗は15日から再開)。 再開後は、来店が過密とならないよう配慮しながら営業し、衛生管理やスタッフの健康チェックに留意していくほか、当面の間はオンライン予約を休止し、 電話予約のみの対応としている。
 このほか、ノエビアでは直営店舗「サロンドスペチアーレ《および「ノエビアスタイル《の臨時休業を継続しており、 緊急事態宣言解除後の営業再開を予定している。日本メナード化粧品では、4月7日から一部サロンでフェイシャルサービスを休止しているほか、 5月1日からはオンライン予約の一部項目を休止している。
ポーラ・オルビスHD1Qコロナ禍で減収減益に
 新型コロナウイルスによる感染拡大は、業績にも大きな影響をもたらしている。DS化粧品最大手のポーラ・オルビスホールディングスの 2020年12月期第1四半期は、連結ベース売上高が前年同期比17.4%減の433億1600万円、営業利益が同70.4%減の20億600万円、 経常搊失が1億5400万円、当期搊失が12億4600万円という厳しい結果となった。
 主要事業であるビューティケア事業は、売上高が同17.8%減の420億8200万円、営業利益が同73.6%減の17億円。ブランド別にみると、 ポーラブランドは、売上高が同21.7%減の250億5700万円、営業利益が同71.5%減の15億9200万円となった。その他のブランドは表の通り。
 ポーラブランドでは、〝コロナ禍〟によってインバウンド需要が減少したほか、バイヤーの減少が響いた。また、国内では外出自粛傾向が続いたほか、 百貨店の営業時間短縮が業績に大きく影響した。売上構成比は、BD(ビューティーディレクター)による委託販売チャネルが74.3%、海外が12.9%、 百貨店・B to B・ECが12.8%。これら事業の売上伸長率は、前年同期比で委託販売チャネルが24.6%減、海外が34.5%増、 百貨店・B to B・ECが35.0%減。海外が大きくプラスに転じているが、これは中国市場での売上が3月から復調傾向にあるため。 委託販売チャネルにおけるショップ数は3910店舗で前年末比46店舗減、PB(ポーラザビューティー)は657店舗で同店舗減。 購入単価および顧客数はそれぞれ8.8%減、18.8%減となった。海外店舗数については2店舗増の14店舗。 製品面では、「赤色光《に着目した「BAライトセレクター《(3月発売)が好調なスタートとなったが、全体では〝コロナ禍〟 の影響を大きく受けることになった。
 同社は第1四半期の業績を踏まえ、通期業績の下方修正を4月24日付で実施。売上高1 900億円(前回予想は2170億円)、 営業利益190億円(同312億円)、経常利益307億円(同165億円)、当期利益200億円(同84億円)と大幅な下方修正となった。 ブランド別の下表修正金額は、ポーラが約70%、オルビスが約15%、営業利益がポーラで約75%、オルビスで約10%。
 同社では、BDの活動において、エステ施術やタッチアップなど、顧客の肌に直接触れる行為を中止しているほか、店舗では臨時休業・時短営業措置をとっている。 今後、感染状況を見ながらエステ活動の再開を行っていくことになるが、最大手がどう動くのか注目される。