消費者庁の「販売預託商法」、委員の半数が参入規制要求

「登録制」主張、「継続監視」「悪質業者排除」理由に

▲新型コロナウイルス問題を受けて書面審議で
    行われた第2回検討委員会は、委員長を除く
    14委員のうち7委員が、「販売預託商法」に
    参入規制を設けるか原則禁止を求める意見を提出
(写真は池本誠司委員の意見書)
   レンタルオーナー商法等の「販売預託商法」規制を検討している消費者庁の「特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会」(以下検討委員会)で、 同商法への参入規制を求める声が一段と高まっている。4月21日、書面審議により開催された第2回会合において、委員の半数が登録制導入の検討を求めたもので、 明確に反対した委員は2人にとどまった。参入規制の旗振り役を務める委員は、反論を想定した〝Q&A〟を用意し、同規制に一貫して消極的な事務局サイドをけん制。 今夏を目途とした意見の集約に向け、鍔迫り合いが続きそうだ。
14人のうち7人が参入障壁を要求
 2月18日開催の初回から2カ月ぶりとなる2回目の検討委員会は、新型コロナウイルス感染防止のため、異例の書面審議形式で実施。15委員のうち、 河上正二委員長(東大名誉教授)を除く14委員から書面で意見の提出を受け、委員の間で閲覧・共有した(ほかにオブザーバー参加の松本恒雄国セン理事長が提出)。
 ここで、前回に続いて最大の焦点となったのが、「販売預託商法」における参入規制の是非。初回会合では「ジャパンライフ」等を事例に、 行政処分が出されても配当が続く間は苦情相談をほとんど把握できなかった実情や、取引の実態をそもそも欠いた「現物まがい取引」の存在、 登録制をもつ業法の成功例などを理由として、複数の委員から参入規制の検討が求められていた。
 この流れを受けて、書面審議となった第2回会合でも委員から参入規制を求める意見が相次ぎ、14委員中6委員が「登録制」を要請。より厳しい「販売預託商法」の 原則禁止を意見した1委員を含めると、委員の半数が参入障壁を求める形となった。
 中でも、参入規制論のけん引役を務める池本誠司委員(弁護士、日弁連消費者問題対策委員会幹事)は、金融商品取引法の集団投資スキーム規制を参考とすることを 提唱するとともに、登録制への反論を想定したQ&A形式の意見も盛り込み、必要性を強調。
 池本委員が消費者委員会委員を務めていた昨年夏、業界ヒアリングでシェアリングエコノミー協会から、販売預託ビジネスに近い業態は「1%もない、 多分ゼロではないか」とコメントを受けたことを理由に、健全な事業者に対する過剰規制への懸念に応答している。
消費者庁の調査で具体取引例を報告
 一方、販売預託の取引には正業と言えないような事業者が含まれるため、参入規制を無用・不適切とする考え方にも応答。
 消費者庁が昨年3月、三菱UFJリサーチ&コンサルティングに委託した「預託等取引に関する実態等調査」において、同一業者が販売・預託するビジネスとして 「キャンピングカーの購入+レンタル」「太陽光発電パネルの販売+発電販売」「果樹園の区画オーナー」「ワインの保管+転売あっせん」「ボートサブレンタル」 「海上コンテナサブリース」などの具体例が報告されていることを紹介し、「販売預託取引は全く想定されないのではなく、現に存在」しているとする。
 産業育成に値しない業者が多数を占めることを念頭に置いた参入規制の否定は、検討委員会の事務局を務める取引対策課も、3月27日の消費者委員会本会議で示唆。 「販売預託商法」の業者に「正業でない、禁止すべきようなビジネス」が含まれるため、同規制は「法的に整合性が出にくいところがある」などとしていた。 同庁のデータをもとにした池本委員の応答は、これをけん制する意図もありそうだ。
仮想通貨交換業の登録制を例示
 また、産業育成が目的ではなく、悪質業者排除のための監視を狙いとした最近のケースとして、資金決済法における暗号資産(仮想通貨)交換業の登録制を例示。 17年4月~18年8月の申請で16社が登録できた一方、12社が取り下げ、1社が拒否されており、「不適正業者の排除がしっかりと実行されている」 として有用性を強調する。参入規制への反論の定番といえる、所謂〝行政コスト論〟や〝お墨付き論〟の反論にも応答している。
 池本委員以外には、鹿野菜穂子委員(慶大学大学院教授)、永沢裕美子委員(NACS代表理事副会長)、増田悦子委員(全相協理事長)、 松岡萬里野委員(日消協理事長)、吉村幸子委員(東京都消費生活部長)の5人が登録制の導入・検討を求める意見を提出。増田委員は「販売預託商法」 を連鎖販売取引や訪問販売で勧誘することの禁止も意見した。より厳しい原則禁止を求めたのは元警察庁生活安全局長の辻義之委員(野村證券顧問)で、 健全な事業者がいる場合に限って「営業を認める法律を制定」「しっかりと監督をしていくべき」とする。
規制反対は2委員 4委員は賛否示さず
 このように〝参入規制推進〟の委員が拡大する中、第2回会合で明確に〝参入規制反対〟の立場を示したのは2委員にとどまる。
 荒井恒一委員(日商理事)は「新たな市場参入を阻害する可能性がある」「無登録者等のアウトサイダーに対しては規制の効果が及ばない」などとして 「導入すべきではない」と意見。樋口一清委員(信州大名誉教授)が「実際の悪質な者の判別や排除には、行政実務上、相当な困難が予想される」 「場合によっては悪質な者を利することとも成り兼ねず、適切な手段ではない」とした。
 残り4委員は、正木義久委員(経団連本部長)が登録制のメリットとデメリットを示した上で、明確な賛否を保留。大森俊一委員(訪販協専務理事)、 万場徹委員(通販協専務理事)、有田芳子委員(主婦連会長)は参入規制自体に意見書で直接触れず、大森委員は「預託法の整備は喫緊の課題」 「実態の伴わない取引の早期発見に資する事前情報の開示義務の徹底等実効性のある手立ての検討が重要」とするに留めている。
 取引対策課は、「今回(=第2回会合)で悪質商法関連の議論が終わったわけではない。今後も議論を続ける」とコメント。 「5月中」を予定するという次回3回目は、各委員をオンラインでつないだテレビ会議方式も視野に入れている。