エフエムジー&ミッション(旧エイボン・プロダクツ) 老舗ブランドの〝新たな挑戦〟

 エイボン・プロダクツは、9月1日付で「エフエムジー&ミッション」(本社・東京都港区、中陽次社長)という新社名で 新たな一歩をスタートさせた(9月12日号既報)。1968年の日本上陸以来、ダイレクトセリングを代表するブランドとして浸透してきた エイボンだが、この50年間は度重なる制度改革、親会社の変更など、〝荒波〟に晒されてきたと言っても過言ではない。 2017年9月に社長に就任した中氏は、「原点回帰」をコンセプトにダイレクトセリング事業のテコ入れ を実施、卸・輸出事業など多角化による基盤強化を図ってきた。昨年、LG生活健康の傘下に入るとともに、50周年という節目を迎え、 「次の50年」を見据えて実施したという今回の変更が今度どのような影響をもたらすのか、注目されている。
 ダイレクトセリング業界にとって、「エイボン」は化粧品を代表するブランドであることは疑いのない事実であろう。その「エイボン」が、「エフエムジー&ミッション」に社 名を改め、今後は「エイボン」の名称が使われなくなるということは、業界関係者を驚かせた。「当たり前に存在していたものが、ある日突然なくなってしまったような気分」 (ダイレクトセリグ化粧品スタッフ)というコメントがあった一方で、「見方を変えれば、これまでの一連のことが、社名変更によって一段落したのでは」(別の化粧品 企業スタッフ)という意見もみられた。いずれにしても、業界関係者の関心は、「なぜ社名変更を?」が大半のようだ。
 過去を遡ること約年前、エイボンは2008 年ごろから業態改革についてさまざまな施策を打ってきた。一例を挙げると、MLMベースのプランを導入して組織の活性化を試みたが、成功はしなかった。その後、20 10年11月、米投資会社が日本法人を買収し、日本のエイボンはグローバルのエイボンから離脱した。さらにその後は、MLM業界でキャリアをもつマイケル・アレン氏を 社長に招聘したり、新事業を立ち上げたりしたものの、軌道には乗せられず、2016年1月には企業再生ファンドの傘下に入った。2018年4 月に韓国の化粧品大手であるLG生活健康の傘下に入るまでの間、中陽次氏が社長に就任。中社長のもと、同社は「原点回帰」をテーマにダイレク トセリング事業の強化をはじめ、「ミッション Y」などによる輸出事業、スキンケアブランド「デュアルフェイス」による卸事業を展開し、ここ2年ほどは安定した事業展 開がみられていた。
 2010年にエイボングループから離脱し、投資会社の傘下に入った後も当時のエイボン・プロダクツ(現・エフエムジー&ミッション)が「エイボ ン」のブランドを使用できたのは、ライセンス契約が継続されてきたことによるもの。今回の社名変更は、このライセンス契約とは関係がなく、エ フエムジー&ミッション側が「主体的に動いて実施した」(中社長)という。同社は昨年あたりからグローバルのエイボンを通じて化粧品の輸出に も力を入れているが、今後もグローバルのエイボンとの関係性は継続し、輸出事業を行っていくことを明らかにしている。
 同社は、今回の社名変更を「創業周年」に実施してきたさまざまな施策の集大成、言い換えれば、「次の年」に向けたサスティナブル経営の元年と位置づけている。 同社の「50周年イヤー」は2018年9月からの1年間を指すが、昨年はLG生活健康の傘下に入るという大きな経営体制の変更があった。201 0年から2018年までの長い年月、当時のエイボンは投資会社の傘下という立場にあったが、LG生活健康という巨大メーカーの傘下に入ったこ とを、中社長は「長期視点での戦略立案が可能」(2018年8月2日号)と評価している。この経営体制の変更も、今回の変更を決断する一因 となったようだ。 社名変更が今後の事業 展開にどう影響するのか、これも業界関係者が注目しているところだ。「エイボン」というブランドを使えなくなったことが、どの程度マイナス の働くのか推測することは難しい。2019年月期上期(1月~6月)の業績は、「横ばい」(中社長)で推移した。下期は消費税率引き上げ の影響も予想されることから、仮にマイナス成長となったとしても、社名変更の影響か否か分析するのは容易ではない。社内体制には変更がなく、 「社名が『エイボン』でなくなるだけで、取り扱い製品が変わることはない」(同)ことから、社名変更はメンバー間にも概ね受け入れられているという。
 今回の社名変更が「次の50年」に向けた前向きな施策であることをアピールするかのように、10月18日には大型スキンケアブランド「ミッション
 スムマ」を投入する(3面参照)。LG生活健康のシナジーを活かして、韓国の「発酵研究所」 による発酵成分を配合した同ブランドは、価格帯が税別1万円~3万5000円、シリーズ5品を揃えると9万5000円というハイブランドだ。これまでの「エイボン」 ブランドが、手に取りやすい価格帯をメーンに展開してきたことを踏まえると、「ミッション スムマ」は他のダイレクトセリング化粧品と同様、 高機能・高付加価値で勝負できるラインナップを揃えたことが分かる。容器デザインについても、高級感のあるゴールドをイメージカラーに採用す るとともに、曲線の多いボトルを用いている。いずれも、「ミッション スムマ」の強みである〝発酵液〟のイメージに由来するという。発酵は、 主力の「ミッション Y」でも訴求ポイントとなっているもので、今後の商品展開においても同社のキーワードとなっていくことが予想される。
 このほかにも、エイボン時代にはなかった日用品などの新しいカテゴリーについてもラインナップを拡充する計画だとい う。だが、差し当たって気になるのは、新社名となって第一弾の大型商品となる「ミッション スムマ」の売れ行きであろう。ダイレクトセリング 化粧品各社は、美容に高い関心をもつ女性層の掘り起こしを行い、ロイヤルユーザーの獲得に注力している。他方では、セルフエステなどリーズナ ブルで間口の広いメニューや商品で幅広い女性に訴求する動きもみられ、事業展開そのものも多様化が進んでいる。「エフエムジー&ミッション」ブ ランドとして投入する「ミッション スムマ」が既存メンバーや新規ユーザーにどう受け入れられるのか、今後の商品戦略の試金石となりそうだ。